2024年度HTC研究会 season2が、5月21日(火)からはじまります。
身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを意味するWell-being。東北大学ヘルステックカレッジは、未来の幸福な健康社会(Well-being)を実現するために解決しなければならない課題にフォーカスします。
第1回 糖尿病医療の現状とunmet needsへの開発研究(5月21日(火)開催)
糖尿病や肥満症に対しては、次々と新たな薬剤が上市されるなど、医療が急速に進歩を遂げていますが、一方で糖尿病患者は増加を続け、発症すると完治が望めず、食事療法を含めた血糖コントロールを一生強いられる現状に変わりはありません。私たちの研究室では、個体レベルでの代謝制御メカニズムとして臓器間ネットワークを提唱し、それを活用して膵β細胞を増量させることにも成功しました。これら、ムーンショット型研究開発事業などで進める根治を目指した研究について紹介します。
東北大学大学院 医学系研究科 医科学専攻 内科病態学講座 糖尿病代謝・内分泌内科学分野
東北大学大学院 医学系研究科 創生応用医学研究センター センター長
教授 片桐 秀樹(博士[医学])
第2回 画像で病気を診て、針と管で治療する ー”放射線診断医”の世界ー(6月18日(火)開催)
放射線診断医は、CTやMRIを用いた画像診断と、画像を見ながら細いデバイスを体の中に入れて非手術的に病気を治す画像下治療(IVR)を担当しています。日本の高血圧患者4300万人の10%(400万人以上)を占める「原発性アルドステロン症」を、ラジオ波焼灼針(電流を流す細い針)をCTで見ながら原因腺腫に刺して完治させる新治療法を開発したことを例に、東北大学での画像診断、低侵襲治療と新規医療機器開発研究を紹介します。
東北大学大学院医学系研究科 放射線診断学分野 教授
教授 高瀬 圭(博士[医学])
第3回 次世代放射光NanoTerasuが拓く創薬研究(7月23日(火)開催)
令和6年度から運用開始するNanoTerasuは、東北大学キャンパス内に設立された世界最高クラスの軟X線放射光施設です。NanoTerasuの放射光を用いると、物質中の化学結合や電子の状態を詳しく知ることができることから、材料科学など様々な分野での利用が期待されています。ライフサイエンス分野においては、薬物動態や細胞内部の可視化ツールとしての利用が可能であり、タンパク質の構造を原子レベルで明らかにすることもできることから、創薬への応用が期待されています。本講義では、NanoTerasuのライフサイエンス分野での利用を中心にご紹介します。
東北大学 多元物質科学研究所 有機・生命科学研究部門 教授
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 教授
特定国立研究開発法人理化学研究所 放射光科学研究センター チームリーダー
教授 南後 恵理子(博士[理学])
第4回 酸化ストレスと硫黄代謝(8月6日(火)開催)
硫黄は生命の進化を牽引してきた元素であります。最近の研究から、生体内にこれまで知られていなかった種々の硫黄を含む生体分子(超硫黄分子と総称する)の存在がわかってきました。超硫黄分子は、抗酸化作用や抗炎症作用を有し、また、ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝を支え、細胞内の情報伝達にも利用されています。こうした超硫黄分子の生体における役割と我々の健康との関係を紹介します。
東北大学大学院 医学系研究科 医化学分野 教授
東北大学 加齢医学研究所 加齢制御研究部門 遺伝子発現制御分野 教授
教授 本橋 ほづみ(博士[医学])
第5回 人口高齢化と健康を通じた地域社会の持続可能性(8月27日(火)開催)
この講義では、高齢化により地域の持続可能性に対する懸念を経済学的に判断するための数量的基準を明確にします。そのうえで、地域社会の破綻を回避するためには、人々の健康水準をどれほど改善する必要があるかをシミュレーション分析して、持続可能な地域のために健康政策が果たすべき役割を明らかにします。
東北大学 大学院経済学研究科 教授
高齢経済社会研究センター センター長
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センター 加齢経済社会研究部門長
教授 吉田 浩(博士[経済学])
第6回 生涯健康脳と認知症予防(9月10日(火)開催)
東北大学には、多数の方の脳画像を用いたデータが集積されており、私たちの研究室では、生涯にわたる健康な脳の維持に関わる多くの研究成果を発表しています。今回、脳画像や生活習慣などのデータベースを用いた研究から、どのような生活習慣が脳の健康維持や認知症予防に有用かを、最新の脳科学の知見をもとに分かりやすく説明していただき、併せてこれらの研究成果の社会実装に関しても紹介します。
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センター センター長
東北大学 加齢医学研究科 教授
株式会社CogSmart 代表取締役・CSO
教授 瀧 靖之(博士[医学])
第7回 行動変容をめざした健康心理学のアプローチ(10月8日(火)開催)
疾病予防のためには、早期発見や治療アドヒアランスなど個人の行動変容が鍵となる一方、知識が必ずしも適切な健康行動につながらない実態があります。健康維持や疾病予防のための行動変容にはどのような心理プロセスが関連しているのか。本講義では、健康行動や疾病予防に関する健康心理学のアプローチや最新の知見を紹介します。また、心理学的エビデンスをいかに社会実装できるか参加者のみなさんと考えていきたいと思います。
東北大学大学院文学研究科・文学部 総合人間学専攻 心理言語人間学講座 心理学分野
お茶の水女子大 基幹研究院 人間科学系
教授 大森 美香(博士[心理学])
第8回 ヘルスケアIoTネットワークシステム(11月12日(火)開催)
生体センサ等のIoTデバイスから機微なデータを収集・蓄積・解析するためのモバイルネットワークを含めたヘルスケアIoTネットワークシステムについて、最新技術と研究開発動向について紹介します。加えて、近年普及しつつあるディジタルツインの概念の観点から、新たなシステム開発の方法論についても解説します。
東北大学サイバーサイエンスセンター・ネットワーク研究部 教授 (センター長)
(兼任)大学院情報科学研究科 教授
教授 菅沼 拓夫(博士[工学])
第9回 「みえる」から始まる、社会の行動変容を促す仕組み開発(12月10日(火)開催)
東北大学では、JSTのプログラム「COI-NEXT」において、「Vision to Connect」拠点を設立しています。「誰もが人生のどのステージでも、共に暮らし、働き、遊べることで、主体的に生き生きと暮らせる社会」を目指す未来像とします。「みえる」を起点としたエンパワーメントを特徴とし、(1)情報格差ゼロ社会の設計を通じて、インクルーシブ・ユニバーサルな社会をつくり、(2)疾患、フレイルを未然に防ぎ、後悔する人がいなくなる仕組み、および(3)エビデンスに基づいた効果的な動機付けを通じて、主体的な行動変容の仕組みを社会に実装するプロジェクトに取り組んでいます。本講演では、その活動の一端を紹介します。
東北大学大学院医学系研究科 神経・感覚器病態学講座 眼科学分野
東北大学COI-NEXT「Vision to Connect」拠点 プロジェクトリーダー
教授 中澤 徹(博士[医学])
第10回 最新の歯周病治療・研究と今後の展望(2025年1月21日(火)開催)
歯周病は、全世界で最も患者が多い病気です。歯肉炎から始まり、進行すると歯周組織が破壊される結果、中年期以降の歯を失う一番の原因となっています。主な原因は歯垢(バイオフィルム)による細菌感染で、リスク因子にはタバコや遺伝、免疫機能の低下が含まれます。歯周病は全身の健康にも影響を与え、心臓病や糖尿病などとの関連も指摘されています。本講義では、歯周病の発症メカニズムや診断・治療法の最新動向、企業とのコラボレーション、そして最新の研究に焦点を当ててお話しします。
東北大学 大学院歯学研究科 歯内歯周治療学分野 教授
教授 山田 聡(博士[歯学])
第11回 医用画像診断のための人工知能による解析から人工知能の解析へ: 医療課題解決に向けて(2月18日(火)開催)
人工知能の基盤技術の1つである機械学習の医用画像解析への応用について説明します。例えばアルツハイマー型認知症の画像診断例や、胃がん検診による早期発見、さらには適応的数理モデルを用いた治療装置の知能化など、臨床応用に向けた具体例をいくつか紹介します。また、深層学習と従来の数理モデルとの相違に着目し、深層学習による画像解析に加え、深層学習自体の解析が医療課題の解決に繋がる可能性について考察します。
大学院医学系研究科 保健学専攻 医用画像工学分野 教授
計測自動制御学会 監事
教授 本間 経康(博士[工学])
第12回 抗アレルギー薬の開発研究(3月11日(火)開催)
花粉症をはじめとするアレルギー疾患患者数は今なお増加しており、単なる対症療法ではなく、治癒、あるいは増悪化を予防する医薬品の開発が望まれています。本講義では、これまでの抗アレルギー薬の作用機構を解説するとともに、新たな標的としての上皮細胞の重要性と、上皮細胞を標的とした演者らの新しい抗アレルギー薬の開発研究について紹介します。また、東北大学大学院薬学研究科医薬品開発研究センターの創薬体制についてもお話しします。
東北大学 大学院薬学研究科・薬学部 医療薬学専攻 医療薬学講座 生活習慣病治療薬学分野 教授
東北大学薬学部・薬学研究科 医薬品開発研究センター センター長
教授 平澤 典保(博士[薬学])