HEALTH TEC LETTER vol.2|NEWSTOPICS・北澤 春樹教授 研究会レポート

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ヘルステックレター vol.2

HTCレターでは、東北大学のヘルステックにまつわるトピックスと、開催したヘルステック研究会についてお届けします。

東北大学 ヘルステックTOPICS

1. 未来のヘルスケアに向けたヒントがあふれる COIプログラム成果書籍『日常人間ドックⓇ』を出版

COIプログラム成果書籍『日常人間ドックⓇ』カバー

生きがいを持って毎日を過ごしながら、自分自身や自分の大切な家族・知人の健康を守りたい。そのために、今私たちがとるべきアクションは何なのか。

東北大学COI加速課題推進研究グループは、こうした”バックキャスティング”という考え方で、工学や医学など広い分野の研究者が様々な企業と取り組みを行っています。

COI加速課題研究推進グループの取り組みは、2021年10月「2021年度グッドデザイン賞」を、2023年1月『第5回オープンイノベーション大賞「選考委員会特別賞」』を受賞しています。

この度、東北大学COI加速課題推進研究グループは稲穂健市特任教授(首席URA)・内閣府上席科学技術政策フェローを編集長とし、COIプログラム及びCOI加速課題のこれまでの成果を一冊の書籍として出版しました。

本書籍のキーフレーズは「さりげないセンシングによる日常人間ドック」です。

日常生活の中で、ウェアラブルデバイスなどのセンシング機器を使って手軽にデータを蓄積し、健康状態を把握しながら、適切なアドバイスや対処法を知らせて病気を未然に防ぐ。そんな仕組み作りへの挑戦を記録しました。

排出された尿から塩分摂取と野菜摂取のバランスがわかる「ナトカリ計」とは?鏡の前に立つだけで現在の体調がわかる「魔法の鏡」とは?叶えたい未来のヘルスケアに向けたヒントがあふれる一冊です。(2023年6月8日:東北大学産学連携機構 イノベーション戦略推進センター事務支援室)

詳細はこちらから(東北大学WEBサイト該当記事へ移動します)

2. ヨーグルトの習慣的な摂取と中耳炎予防 全国出生コホート調査(エコチル調査)の乳幼児約10万組のデータから

近年の研究により、プロバイオティクススには中耳炎の予防効果があることが知られています。しかし生活習慣としてヨーグルトを摂取することにどの程度の効果があるかについては不明でした。

東北大学病院の土谷忍助教らのグループは、環境省が実施している子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の95,380組の親子を対象に、中耳炎発症の有無(6か月、1歳、1歳半、2歳時点での罹患を確認)と、母子それぞれのヨーグルトの習慣的な摂取頻度の関連について解析を行いました。

その結果、ヨーグルト摂取が高頻度なほど、乳幼児期の中耳炎発症リスクが低下することを認めました。最も顕著な効果は生後6 カ月時の中耳炎発症との関連で認められ、摂取しない群と比較して、毎日ヨーグルトを摂取する子どもでは37%のリスク低下が統計的に有意であることが示されました。

本研究の成果は、2023年5月17日付でProbiotics and Antimicrobial Proteinsに掲載されました。
(2023年5月25日:東北大学病院 顎口腔機能治療部 助教 土谷 忍)

※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。
※この研究をもって乳製品の積極的な摂取を推奨するものではありません。
詳細はこちらから(東北大学WEBサイト該当記事へ移動します)

3. 食べた酸化脂質の行き着く先は?

脂質は、私たちのからだを構成する重要な成分です。一方、脂質が酸化され過酸化脂質となり、からだに蓄積すると、疾病に繋がると言われています。

最近、過酸化脂質は私たちが日常的に食べる食品(油等)にもごく僅かながら含まれることが明らかになり、その行方(摂取したものは吸収され蓄積するのか?吸収されずに代謝されるのか?)に興味が持たれていました。

東北大学大学院農学研究科の仲川清隆教授および髙橋巧博士、福島大学の吉永和明准教授、秋田大学の桐明絢助教、東京海洋大学の後藤直宏教授らの研究グループは、最新の分析技術を構築・駆使し、過酸化脂質の吸収・代謝解明に挑戦しました。

その結果、摂取した食事由来の過酸化脂質は吸収されないものの、その腸管への流入刺激が「からだ(腸管)の中での脂質の酸化」を引き起こし、それにより「新たな過酸化脂質が生成されること」を初めて明らかにしました。

長らく、過酸化脂質がどのようにしてからだに蓄積するかは不明でしたが、本研究によってそのメカニズムの一端が明らかになりました。

今後、こうしたことの生理的意義(からだに備わった適切な防御反応なのか?等)を追究することで、疾病の早期発見・予防・治癒法の開発に繋がることが期待されます。
(2022年9月26日:東北大学大学院農学研究科 食品機能分析学分野 教授 仲川清隆)

本研究成果は、2022年9月19日に国際学会誌「Redox Biology」にオンライン掲載されました。

詳細はこちらから(東北大学 大学院農学研究科・農学部WEBサイト該当記事へ移動します)

第2回 ヘルステック研究会 レポート

北澤春樹教授

第2回のHTC研究会は、 東北大学大学院 農学研究科長・農学部長、北澤 春樹教授による 『プロバイオティック革命:「(ポスト)イムノバイオティクス」の魅力と将来性』です。(以下講義より引用)

ヒトや動物は、新興・再興感染症の脅威に常にさらされており、特効薬の開発に時間と労力を要することから、薬のみに頼らない健康生活の飛躍的向上が切望されています。

乳酸菌を代表とするプロバイオティクス(適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物:代表的なものは乳酸菌)の中でも、とくに粘膜免疫機能性を発揮する(ポスト)イムノバイオティクス(プロバイオティクスの中でも、粘膜免疫機能性を発揮する菌)は、生体の免疫力を底上げし健康長寿を支える有用微生物として、食生活に欠かせない素材として期待されています。

北澤教授は、この次世代プロバイオティクスとしての(ポスト)イムノバイオティクスの研究を長年行っており、講義前半では、その魅力と将来性について紹介頂きました。

講義後半では、人のみならず家畜における感染症の世界的拡大が加速する中で、ワクチンや衛生管理に加え、抗菌剤に依存しない第3の感染疾病対策による家畜健全育成技術の飛躍的向上について説明がありました。

具体的には、比較ゲノム解析からイムノバイオティクスにおける抗ウイルス免疫に関わる候補因子(イムノジェニクス(ポストバイオティクス))を解析し、分子生物学的手法を用いた検証も推進しており、コロナウイルス感染低減に有用なイムノバイオティクスに関する海外共同研究も紹介されました。

質疑応答では、農学と免疫学の融合研究領域を専門とした、世界初の国際教育研究センター「食と農免疫国際教育研究センター(仙台市青葉区)」での研究内容や、世界各国のヨーグルトやチーズなどの乳製品と免疫力の違いなどが質疑されました。
(続きはHTCのご参加による見逃し配信でご覧いただけます。)

食と農免疫国際教育研究センター(CFAI)とは

食と農免疫国際教育研究センター(CFAI)は、農学と免疫学の融合研究領域「食と農免疫」を専門とし2015年4月に誕生した世界初の国際教育研究センターです。医農免疫の分野横断的な強力基盤と放射光を取り入れた次世代生命農学により、食と農免疫の国際教育研究をさらに推進し、世界をリードする次世代型農業の発展に貢献しています。

ポストバイオティクスについて

講義は「腸内細菌と肥満は関係が深い?」「サイコバイオティクス」「プロバイオティクスマーケット」など、様々なトピックスについての解説がありました。薬のみに頼らず免疫力の底上げを促す研究は、非常に興味深い内容となりました。

第3回ヘルステック研究会は7月4日対面開催

次回、第3回ヘルステック研究会は、片平キャンパス電気通信研究所にて、北村喜文教授による、「非言語情報が拓く人間性豊かなコミュニケーション~サイバー空間・リアル空間活用技術のヘルステックへの挑戦~」をテーマに対面開催を行います。

日常の対人コミュニケーションで重要な役割を担っている「非言語情報」のやりとりは、これからの遠隔コミュニケーションを人間性豊かなものにするためには不可欠です。

VRやメタバースなどサイバー空間を活用する遠隔コミュニケーションも今後さらなる利用拡大が予想されていますが、そこでの人間性豊かなコミュニケーションを実現するためには、克服すべき課題は多くあります。またこれらには、人々の健康維持・増進にも役立つと期待されているものもあります。このような私たちの試みのいくつかを紹介いただきます。

講義の後は、東北大学片平キャンパスにあるインタラクティブコンテンツ研究室の見学&VR体験、名刺交換会を行います。

PARTICIPATION
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