7月17日開催!第3回ヘルステック研究会は、吉田美香子教授による「ウィメンズヘルスの課題 ー女性がイキイキと活躍できるために必要なフェムテックー」です。

東北大学ヘルステックカレッジ > EVENTS&NEWS > 7月17日開催!第3回ヘルステック研究会は、吉田美香子教授による「ウィメンズヘルスの課題 ー女性がイキイキと活躍できるために必要なフェムテックー」です。

講義テーマ:ウィメンズヘルスの課題 ー 女性がイキイキと活躍できるために必要なフェムテック ー
女性は、妊娠・出産・更年期などのライフイベントを通じて心身の変化を経験します。女性の悩みの解決に役立つ商品やサービス(フェムテック)が出てきていますが、心と体のバランスをとしながら自分らしく女性が活躍するためには、フェムテックのさらなる充実が期待されます。本講義では、女性を取りまく社会情勢や健康課題の最新動向と、研究や企業とのコラボレーションを通じた私たちの取り組みを紹介します。

2025年度の東北大学ヘルステックカレッジ 第3回ヘルステック研究会にご登壇いただく、東北大学大学院医学系研究科、ウィメンズヘルス・助産学分野 教授の吉田 美香子先生にお話を伺いました。

ウィメンズヘルス・助産学分野の研究の道に進んだ経緯

広島大学保健学科看護学専攻を卒業後、最初は広島大学病院に助産師として臨床経験を積みました。そこは混合病棟だったので、出産だけではなく産婦人科系の疾患を患った患者さんもたくさんいらっしゃったのです。

そこで、多くの患者さんと関わるうちに、女性の健康は、その時々の生活環境や年代での身体変化により様々に移り行くものだから、そのライフステージに応じて予防ケアすることがとても大事であることを実感しました。病気になってからではダメだ、その前に予防ケアしなければ、という思いから看護・ケアの開発、ウィメンズヘルスの研究に従事してきました。

妊婦さんだけでなく、多くの女性患者さんと話す機会を得て

とても貴重な経験でした。広島大学病院の後、日本赤十字社医療センターで助産師として更に臨床経験を積んだ後、東京大学大学院健康科学・看護学専攻に進学し、分娩による身体ダメージをテーマに骨盤底筋機能障害による尿失禁に関する研究に従事しました。

妊娠中は大きくなった子宮が膀胱を圧迫することで、尿もれが起こりやすくなります。また、産後の尿もれは分娩時に骨盤底筋に負担がかかることが大きな要因です。

骨盤底筋とは、骨盤の底にあって、子宮や膀胱、直腸などの腹部臓器を支えている筋肉です。赤ちゃんが産道から顔を出すには、骨盤底筋を普段の3倍の長さまで伸ばさなければならず、筋線維が切れたり損傷したりします。この骨盤底筋がゆるむと尿道の締まりが悪くなって尿もれにつながってしまうのです。

看護・ケアの開発に取り組む

産後に尿もれがある場合は、尿を止めるように、肛門を締めるようにといった動きを繰り返すように口頭で指導するリハビリテーションが一般的で、科学的ではありませんでした。

そこで、産婦人科医や理学療法士の協力を得て、超音波画像を用いた分娩時の骨盤底筋機能のダメージを視覚的に評価する方法を開発しました。筋肉の動きが可視化されることで、患者さん自身がわかりやすく、楽しみながらリハビリテーションに取り組める要素を取り入れ、かつ、機能回復のための骨盤底リハビリテーションを実装し、有効性を発信してきました。

超音波画像を見ながらどんな動きが良いのか、患者さんが指導者と共有することによって、自分で確認しながらリハビリに取り組む方が多くなったことは非常に良かったと思います。

また、このリハビリテーションは男性からもニーズがあって、前立腺全摘除後の骨盤底筋機能評価、術後尿失禁に対する骨盤底リハビリテーションへと発展させて、今では医師・看護職・理学療法士への研修も行っています。

女性だけでなく、男性の課題も研究で取り扱う助産師として

私たちの分野は“ウィメンズヘルス”となっていますが、性は男女に二分できるものではなく、また、生殖(子どもを持つ・持たない)も当事者が自由に選択できるものであることから、どんな性や生殖の問題に関しても関心を持つ姿勢で研究を進めています。

例えば、普段の会話で月経とか生理という言葉は使わず、暗に伏せて話すじゃないですか。その言葉が持っている、何かネガティブな考え方がありますよね。日本の文化や社会構造の中で、言ってはいけない言葉に対するバイアスや偏見みたいなものをなるべく少なくしていきたいですね。

従来の性や生殖などにとどまらず、ジェンダー平等や性の多様性、自己決定能力などを含む人権尊重を基本とした性教育が大事だと思います。

参加される方へのメッセージ

看護は、どちらかというとこれまでの経験や勘に頼るところがありましたが、企業の方とのテクノロジーを駆使したサービスの開発が重要だと思います。

一例として、閉経前後10年間に現れる更年期症状の中でも、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗)は、冬なのに急に汗が出てきて、知られたくないのに周囲に更年期であることが知られてしまいます。そこで、スマートウォッチによる予測デバイスを開発しようと、現在、観察研究をおこなっています。

また、社会課題に対するサービス開発も多くあると思います。例えば、男性の育休取得率は過去最高の4割に達する一方、9人に1人が「産後うつ」であることも見逃せません。育休を取るための仕事の前倒しや、心の余裕がない状態で誰にも相談できない環境を改善するためにも、本人に気づかせてあげる、周りにアラートを送ってあげられるサービスがあると良いですね。 フェムケア製品の開発や販売に関するアイデア、デザインなどのアドバイス経験もありますので、企業の皆様の課題や悩みを一緒に解決できればと思います。


吉田先生のご紹介は以上になります。

ヘルステック研究会へのご参加は、以下ボタンのリンク先フォームより申し込みください。