
2025年度の東北大学ヘルステックカレッジ第1回ヘルステック研究会にご登壇いただく、東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座形成外科学分野教授の今井啓道先生にお話を伺いました。
今井先生が取り組んでいる「可視的差異」とは、他者から観察できる身体的差異のことで、Visible Difference(VD)とも呼ばれます。可視的差異には、先天的なものと、怪我などによる後天的なものがあります。手術である程度の改善は見込めるものの、完全に差異のない外見にすることは難しい場合が多いそうです。
このような可視的差異は、相手の第一印象を大きく左右し、内面の良し悪しに関わらず外見で判断されてしまうことがあります。その結果、いじめや差別につながることも少なくなく、可視的差異が原因で社会生活における困難を抱える人は少なくありません。
この問題は、ニュースや新聞で特集されることはあるものの、当事者が声を上げづらい現状があり、差別であると認識されていないケースも多いとのことです。
このような現状だからこそ、今井先生をはじめとする可視的差異の問題に取り組む方々は、手術で完全に差異をなくすことが難しい現状を踏まえ、社会生活における困難を軽減するため、以下の様な研究を進めていらっしゃいます。
①心理士によるサポート
外見の問題で悩む患者さんへの心理社会的サポートについて、世界的には形成外科に心理士が配置されていることが多いですが、日本国内では東北大学病院のみで実施されています。
東北大学病院では、2011年から外来に心理士を配置し、患者さんのサポートを行っています。患者数は徐々に増加していますが、心理士の人数不足により、十分な対応ができていない現状や、心理士の育成が容易ではないという課題も生じています。
そこで、AIを用いたセルフサポートの研究を進められており、スマートフォンアプリ化が構想されています。詳細については、講義でお話しいただく予定です。
②可視的差異に対する社会の認識
社会的な認知がまだ十分に進んでいないことから、行政を巻き込み、外見の問題を抱える子どもたちへのサポート体制を強化したいと考えていらっしゃいます。
また、後天的な可視的差異に悩む患者さんだけでなく、先天的な可視的差異のある子を持つ親御さん、特に母親への産後の心理的サポートを強く求めていらっしゃいました。 現在は、障害のある子どもたちのサポートは子ども家庭庁が中心となって行われていますが、可視的差異のような顔の障害は障害として認識されていないため、行政への働きかけを強化したいとのことで、賛同いただける行政や企業からのサポートを求めていらっしゃいます。
③メディカルメイク
顔の可視的差異のある人に似合うメイクをすることで、その人を輝かせ、自信を持たせ、内面を引き出すようなメイクによって、社会参加を促進することを目指したメディカルメイクの研究を進めていらっしゃいます。 メイクで傷を隠すことが必ずしもプラスに作用するとは限らないため、傷を隠さないメイクや心理的効果などについても研究を進めていらっしゃいます。
今井先生のご紹介は以上になります。
ヘルステック研究会へのご参加は、以下ボタンのリンク先フォームより申し込みください。
