HTC LETTER vol.01|NEWSTOPICS・片桐 秀樹 教授 研究会レポート

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HTCレターでは、東北大学のヘルステックにまつわるトピックスと、開催したヘルステック研究会についてお届けします。

東北大学 ヘルステックTOPICS

1. 東北大学×仙台放送×日本生命×仙台市「眼からはじめるやさしい街づくり」連携協定を締結 ~移動眼科検診を5月から仙台市内でスタート~

人の目の健康は、QOL(Quality of life/生活の質)に直結するものですが、現状 は日本の眼底検査受診率は先進国の中で最低水準にとどまっており、気づきにくい目の疾患をいかに早期に発見するかが、健康で豊かな生活を送るための重要な社会課題となっています。

東北大学大学院医学系研究科(研究科長:石井直人、以下「東北大学」)、株式会社仙台放送(代表取締役社長稲木甲二、以下「仙台放送」)、日本生命保険相互会社(代表取締役社長 清水博、以下「日本生命」) は、2023 年 8 月より東北大学大学院医学系研究科眼科学分野 中澤徹教授監修のもとで眼疾患の早期発見に向けた取り組みを開始しました。今回、2024年5月1日に、4者協定「眼からはじめるやさしい街づくり」を締結し、仙台市民の「眼科検診」受診機会を広げていく「移動眼科検診」を仙台市内にて行います。この活動を通じて、眼の病気に対する気づきを与える機会を提供すると共に、個々の目の状態に応じて眼底検査(自由診療)などの健診を促しながら、眼疾患の早期発見と予防につながる活動を進めていきます。

(2024年5月13日:東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室 東北大学病院広報室)

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2.骨再生作用および抗炎症効果を示す新たな生体活性ガラスを開発 骨補填材への応用に期待

骨折や腫瘍の摘出によって生じた骨欠損を治療するために、様々な骨補填材が利用されています。近年では生体内に吸収されながら様々なイオンを放出する生体活性ガラスが注目を集め、骨の再生を促す骨補填材への応用が期待されています。しかしながら、これまでの研究では生体活性ガラスは骨欠損部において骨再生促進作用を示す一方で、長期間残存し、さらには炎症を惹起したため、骨補填材としての臨床応用は困難でした。
 東北大学大学院歯学研究科の近藤威助教、江草宏教授らの研究グループは、既存の生体活性ガラスと比較して吸収性が高く、かつ亜鉛イオンやフッ化物イオンなど様々なイオンを放出する生体活性ガラスを開発し、これが高い骨再生作用および抗炎症効果を示すことを明らかにしました。本研究成果により生体活性ガラスを利用した新たな骨補填材の開発が期待されます。
 本研究成果は、2024年4月6日に科学誌Journal of Dental Researchのオンライン版に掲載されました。

(2024年4月22日:歯学研究科次世代歯科材料工学講座 教授 江草 宏)

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3. 左脳の脳卒中と右脳の脳卒中では歩行速度低下の要因が異なる -個別化されたより効果的な歩行リハビリテーションの開発に期待-

脳卒中の患者の歩行速度は、日常生活の自立度と関連があり、リハビリテーションにとって重要な指標です。左脳の脳卒中と右脳の脳卒中では生じる機能障害が異なることが知られていますが、どちらにも共通で起こる歩行速度低下の要因の違いは明らかにされておらず、同一の要因と考えられていました。

東北大学病院診療技術部リハビリテーション部門 関口雄介主任理学療法士、同大学大学院医学系研究科 海老原覚教授、出江紳一名誉教授、本田啓太非常勤講師、同大学大学院工学研究科 大脇大准教授らの研究グループは、3次元動作解析装置を用いて脳卒中症例と健常者の大規模な歩行解析を行い、下肢の関節で発生する力や関節間で協調して生じる力のタイミングを網羅的に解析しました。その結果、左脳の脳卒中と右脳の脳卒中では、歩行速度低下の要因として、歩行時の左右の下肢の役割が異なることを明らかにしました。

本研究成果は、脳卒中後の歩行速度低下の障害理解を深めるとともに、脳卒中後の歩行リハビリテーションの個別化や装具、ロボット開発への寄与が期待されます。

本研究成果は、科学誌 Frontiers in Bioengineering and Biotechnologyにて2024年3月19日にオンライン公開されました。

(2024年4月9日:病院診療技術部リハビリテーション部門 主任 関口雄介)

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第1回 ヘルステック研究会 レポート

第1回のHTC研究会は、東北大学大学院医学系研究科 医科学専攻 内科病態学講座 糖尿病代謝・内分泌内科学分野、東北大学大学院医学系研究科 創生応用医学研究センター センター長 片桐 秀樹 教授による講義テーマ「糖尿病医療の現状とunmet needsに対する開発研究」です。(以下講義より引用)

はじめに

「糖尿病医療の現状とunmet needsに対する開発研究」とさせていただきました。片桐と申します。臨床医として糖尿病、内分泌、肥満、代謝疾患などの患者さんを拝見しつつ、研究者として研究を進め、患者さんに対しての治療などに向けた研究を続けています。このような医師と研究者を兼ねるような人間をPhysician Scientistというらしいのですが、だいぶ今は減っていると聞いています。絶滅危惧種として温かい目で見ていただければと思います。

今日の話は以下の通りです。

  1. 糖尿病って何?インスリンって何?
  2. 現在の糖尿病の専門治療とunmet needs
  3. 臓器間ネットワークの発見と発展
  4. 膵β細胞増殖・機能亢進へ向けての研究
  5. 健康長寿に向けた肝臓の糖処理促進
  6. 肝の制御による運動耐容能亢進とサルコペニア対策
  7. 産業界へのメッセージ

まず、糖尿病とは何かについて、参加者が必ずしも糖尿病のご専門の方ばかりではないということで、少し基本的なところと、さらに現在の糖尿病専門治療の最先端で行われている治療とそのumnet needsについてお話いたします。

そして「3. 臓器間ネットワークの発見と発展」から研究の話になっていきます。これは体がどういうメカニズムでできているかという基本的な研究になるのですが、それを応用させての「4. 膵β細胞増殖・機能亢進へ向けての研究」さらに「5. 健康長寿に向けた肝臓の糖処理促進」、6の運動やサルコペニアに向けての研究、そして最後に皆様へ向けてのメッセージということで、こちらは本当に少しですけれどもお話ししたいと思います。

糖尿病の増加

まず、糖尿病とは何かということです。ご存じの通り、糖尿病は非常に増えていまして、2010年の統計で2億8460万人、2030年には4億3840万人に増えると言われています。もちろん日本でも、2017年の新聞記事で1000万人を超えたと書かれています。この記事は、実に示唆に富んだところがありまして、後ほど改めて確認しますが、予備軍も1000万人いるということで、合計で2000万人が糖尿病だというのが今の日本の現状だそうです。

では糖尿病の何が具合悪いのでしょうか。それは糖尿病がもとで合併症を起こしてくるからです。血糖値がその時高いことで起こる問題ももちろんありますが、それ以上に、その状態が長く続くことで後になっていろいろ具合が悪くなってくるのが、一番の問題点です。

糖尿病による合併症

最小血管合併症、あるいは三大合併症と言われますが、糖尿病が悪いと腎臓が悪くなったり、目が見えにくくなったり、神経が悪くなったりします。また大きな血管では大血管合併症で、これは動脈硬化になります。心臓の周りの血管が詰まると心筋梗塞、脳の中の血管が詰まってくると脳梗塞、足の血管が詰まってくると足壊疽が起こってきます。

腎臓のケースで一番悪いパターンは、透析まで行ってしまうことです。糖尿病が原因で透析されている方は年間1万6000人といわれてますが、これは透析原因の第一位になります。また、糖尿病が原因で失明される方は年間3000人くらい。さらに神経障害も実は馬鹿になりません。いろんな神経がやられて特に自律神経なんかが具合が悪くなってくるとお腹の調子が悪くなったり、立ち上がったらフラフラして歩けなくなったり等というようなことも起きます。

動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞で亡くなる方は、日本人の死因の4分の1ということでして、糖尿病は万病のもとという風に言われています。糖尿病をうまくコントロールすれば、だいぶこういうものが抑えられるし、さらには糖尿病を治してしまうことができれば、もうこんなことは考えなくていいということになるわけです。

糖尿病とはどんな病気か

糖尿病というのは血糖値が高くなる病気で、決して尿に糖が出る病気ではありません。おおもとの原因は血糖値が高くなることであり、糖が出なくても血糖値が高ければ糖尿病ですし、糖が出ても血糖値が高くなければ合併症を起こしてこないというわけですが、診断基準は血糖値で以て決められています。

糖尿病が1型・2型と分類されることは、皆さんもご存じかと思います。1型糖尿病というのはお子さんでも起こりますけれども、大人になってから起こることも非常に多く、インスリンが出なくなる、または、膵臓のβ細胞というところが壊れてしまってインスリンが出なくなるようなタイプの糖尿病です。

一方で2型糖尿病というのは、それなりにインスリンは出ているけれども、相対的にインスリンの値が足りない、あるいはインスリンが出てるんだけど足りていない、あるいはそれなりに出る量が減ってきて足りない等、いろんな状況で糖尿病が起こってくるわけです。

インスリンとは何か

ここまで「インスリンが出る出ない」というところが大きなポイントだとお話ししました。では、インスリンとは何なのか、ということをもう一回おさらいしておきましょう。

インスリンというのは体の中で血糖値を下げる唯一のホルモンだと考えられています。先ほどお話ししましたように、膵臓の中に約100万個のランゲルハンス島という島状にインスリンを出す細胞が固まって存在していると言われています。

インスリンを出すことができるのは、体内でこの細胞だけでして、膵臓がなくなるとインスリンが出なくなります。非常に単純な例では、膵臓を摘出するような手術を受けた場合に体からインスリンを出すことができなくなるわけです。唯一のホルモンがここから出ていて、これ以外のメカニズムで血糖値を下げるというのは、なかなか難しいです。

では、インスリンがどうやって血糖値を下げているのか。何か食べたとき、食べたものは血液に入って糖分になり、血糖値が上がってきたぞというのを、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞が認識してインスリンを出し、そのインスリンが血液中にある糖分を細胞の中へ取り込ませたりします。あるいは物を食べてない時に血糖値が下がらないよう、主に肝臓からブドウ糖が血液中に放出されていますので、その放出をインスリンが止めたり、ブドウ糖のある場所を血中から細胞の中へシフトさせるというのがインスリンの役割です。

この糖に応答して出るインスリンの分泌と、それに応答して糖が取り込まれるというのが、インスリンの作用として血糖値を下げるメカニズムであり、これは中学の教科書にも載っているような内容ですが、もう一度おさらいさせていただきました。

また糖尿病は、このインスリン分泌が悪い、あるいは同じインスリンが来ても取り込むパワーが落ち、インスリンに対して抵抗してしまう、抵抗性が相まって起こるといわれています。

糖尿病の病態

糖尿病の病態として、お話ししたように一つ目はインスリン分泌が悪くなり、膵臓のランゲルハンス島の中にあるβ細胞の、数が減る・機能が落ちるというようなことが2型糖尿病で起こってくるわけです。

1型のほうは、絶対数としてのβ細胞の量が減るわけですが、2型のほうは量の減少や機能不全が連携して重なりあって起こってくると考えられます。

実際に、糖尿病になっていくにつれてβ細胞の量自体が減ってくるということは、今では有名な話になっていまして、逆を言えばβ細胞の量がきっちり保たれていれば、糖尿病にはなりにくいと考えられます。

そして、インスリン分泌不全ともう一つ、先ほど言いましたがインスリンに抵抗してしまいインスリンが来ても効果が弱く、またはきっちり働かないというインスリン抵抗性ですが、これは主な原因として肥満の状況で起こってくると一般的に言われています。

これは、摂取肥満であることはもちろんですが、飲食での摂取カロリーと消費のカロリーがアンバランスになり、使うよりも食べるほうが多いものだから、あまったエネルギーが肥満になるわけです。肥満になると 筋肉や肝臓の中にエネルギーがたくさんあるので、細胞としては必ずしも血糖値を取り込まなくても十分生きていけます。もっともっと取り込みなさいと言われても、倉庫はいっぱいなので抵抗してしまうというのがインスリン抵抗性だというような概念で捉えてもらうといいと思います。

では私たちはこの分泌不全に対して、どういう治療をやっていて何がunmet needsなのかというようなところに話を進めていきたいと思います。(中略)

本日紹介した7つのシーズ

本日紹介したシーズは7つのものになります。臨床試験をやっているものなど、様々なシーズの段階があります。

  1. AIによるインスリン治療提案
  2. 膵β細胞増殖治療
  3. 基礎代謝増加療法
  4. 肝糖処理能簡便検査法
  5. 臓器別数理シミュレータ
  6. 運動能向上
  7. サルコペニア予防法

産業界の皆さまには、医学的問題点やUnmet needsを克服し、社会実装につなげるパートナーになっていただきたい。医師や研究者だけでは達成できません。

最後に

どういうメカニズムで生きているのかというのを研究していたら、いろいろな病気の根本治療に向けての研究や思いもよらない治療ターゲットが見つかってきているところでして、引き続きご一緒いただければと思います。(後略)

(全講義はヘルステックカレッジの参加でご覧いただけます)

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