第1回HTC研究会は、 東北大学大学院医学系研究科 医科学専攻 内科病態学講座 糖尿病代謝・内分泌内科学分野、東北大学大学院医学系研究科 創生応用医学研究センター センター長、片桐 秀樹 教授 「糖尿病医療の現状とunmet needsへの開発研究」です。
片桐教授は、医師として、研究者として肥満・糖尿病という現代人を悩ませる疾病の解明に向け研究を続けている先生です。
糖尿病や肥満症に対しては、次々と新たな薬剤が上市されるなど、医療が急速に進歩を遂げていますが、一方で糖尿病患者は増加を続け、発症すると完治が望めず、食事療法を含めた血糖コントロールを一生強いられる現状に変わりはありません。
先生の研究室では、個体レベルでの代謝制御メカニズムとして臓器間ネットワークを提唱し、それを活用して膵β細胞を増量させることにも成功しました。これら、ムーンショット型研究開発事業などで進める根治を目指した研究について紹介いただきます。
ムーンショット型研究開発事業における研究の概要
(以下ムーンショット型研究開発事業サイトより抜粋)
2050年までに糖尿病やその併発疾患を超早期段階で簡便に発見しそれを克服することができる社会の実現を目指します。そのために、医学の各分野はもちろん、薬学、情報科学、工学、数学などの様々な領域の研究者と連携して、臓器間ネットワークを中心とした個体レベルでの恒常性を維持するメカニズム解明、糖尿病やその併発疾患の超早期段階の定義、その簡単な発見法の開発、改善方法の創出に向けた研究を精力的に展開しています。
本プロジェクトでは、超早期の糖代謝異常の進行を抑え、正常に復する予防・治療法の開発、さらに、非侵襲的に超早期の糖代謝異常者や併発症者を検出する手法の開発を目指します。そのため、以下の1~4の研究開発項目内、および、研究開発項目間で密接に連携を取りながら研究を進めていきます。
研究開発項目1:臓器間ネットワークによる恒常性メカニズム解明と治療・診断法の開発
代謝や循環に関わる個体レベルでの恒常性を維持する臓器間ネットワーク機構の解明を進めます。特に、求心性経路の分子機構、中枢神経での統御機構、遠心性神経の活動実態、腸管を介した制御、液性因子による代謝関連主要臓器・組織の個体レベルでの制御機構について解明します。
研究開発項目2:糖尿病における多臓器変容メカニズムの解明と制御
糖尿病は多臓器の変容によっておこり、また、糖尿病になることで多臓器の変調をきたします。心・肝・脳・腎などの臓器や血管において、臓器の変容を機能・形態の両面から解析します。さらに、炎症細胞などの制御機構との関連やケトン体の投与効果などを検討し、治療・診断標的を提案し、実証につなげる研究を促進します。
研究開発項目3:ヒトでの生体情報を簡便に取得する技術の開発とヒトデータ解析
糖尿病や併発疾患は、特に病初期は無症状のことが多いです。接触・非接触デバイスによる生体情報、ゲノム、呼気を用いた糖酸化レートの解析からできる限り簡便かつ非侵襲的に糖尿病や併発症の早期段階を検出・予測できる手法を開発し社会実装することを目指します。
研究開発項目4:数理モデル解析による恒常性の理解とその応用
研究開発項目1、2の動物実験データ、研究開発項目1、2、3のヒト生体データを用いて、数理モデル解析を進め、重要要素の抽出による包括的な理解につなげます。
研究開発項目5:糖尿病や併発疾患の未病段階の理解とデータ基盤の構築
(引用以上)
「自身のメカニズムで糖尿病を根治できる日」はきっと来る
片桐先生のインタビュー記事がesse-sense(エッセンス)サイトよりご覧いただけます。