HEALTH TEC LETTER vol.6|NEWSTOPICS・田宮 元 教授 研究会レポート

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HTCレターでは、東北大学のヘルステックにまつわるトピックスと、開催したヘルステック研究会についてお届けします。

東北大学 ヘルステックTOPICS

1. 東北大学大学院医学系研究科×仙台放送×日本生命 緑内障を含む眼疾患の早期発見に向けた取り組みの開始 ~新開発の「視野チェックアプリ(METEOR BLASTER)VR版」を活用~

人の目の健康は、QOL(Quality of life/生活の質)に直結するものですが、現状では日本の眼底検査受診率は先進国の中で最低水準にとどまっており、気づきにくい目の疾患をいかに早期に発見するかが、あらゆる世代の方が健康で豊かな生活を送るための重要な社会課題となっています。

取り組みの第一歩として、2023年8月5日(土)・6日(日)に開催された「みやぎ元気まつり2023」にて、目の健康状態を判定する視野チェックアプリ「メテオブラスター(METEOR BLASTER)」VR版の無料体験会を3者で出展しました。

本アプリは、宇宙空間を舞台に、画面中心に登場する隕石をレーザー砲で破壊しながら星(=白い光)を捉えるシューティングゲームで、ユーザーの視野の状態を簡易判定するものです。今回開発されたVR版では、360度が宇宙空間という圧倒的な没入感の中で、ユーザーは宇宙船のコックピットに乗り込み、宇宙空間を高速で移動しながら隕石を破壊するという、迫力あるゲーム体験を楽しむことができます。

(2023年7月31日:大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座眼科学分野 教授 中澤徹)

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2. 女性の更年期と自殺念慮との関係 思春期コホートの母親に関するデータ解析から

近年、世界的に中高年期の女性の自殺が増えていますが、この女性特有の増加の理由はよくわかっていません。東北大学大学院医学系研究科精神看護学分野の中西三春准教授、ブリストル大学のサラ・サリバン主席研究フェロー、東京都医学総合研究所の西田淳志・社会健康医学研究センター長らのグループは、「更年期が自殺したい気持ちを生じさせる」という仮説を検証するために、思春期の子どもと養育者を追跡して調査している「東京ティーンコホート注3」のデータを解析しました。養育者のうち子どもの母親である2944人を対象に、①第2期調査(2014年7月~2017年1月)と②第4期調査(2019年2月~2021年9月)の情報を用い、第2期調査時の自殺したい気持ちの有無を調整したうえで、第4期調査時の自殺したい気持ちの有無と更年期が関連するかどうか検証しました。

解析の結果、第2期調査の後に更年期が始まった人は、まだ更年期が始まっていない人と比べて、自殺したい気持ちを生じるリスクが統計的に有意に高くなりました。さらに、社会から多くの支援を受けていると自殺したい気持ちが抑えられることもわかりました。以上から、更年期が始まった女性に対しては、自殺したい気持ちの出現に気を配り、これまで以上に社会として支援する必要性があることを示唆しています。

本研究成果は、Journal of Affective Disorders誌にて8月16日にオンライン公開されました。
(2023年9月 6日:大学院医学系研究科保健学専攻精神看護学分野 准教授 中西三春)

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3. 温度による酵素の構造変化を分子動画撮影 様々な生体高分子のダイナミクスを決定する新たな方法論

生命維持に必須であるタンパク質は巧みに構造変化を起こすことから、タンパク質の複雑な機能と深い相関を持つ”動き”に興味が持たれてきました。最近、X線自由電子レーザー(XFEL)(注1)を用いて、タンパク質の動きを原子レベルで動画として可視化する方法が確立されましたが、この方法が使えるのは光で反応するタンパク質に限られていました。今回、東北大学多元物質科学研究所の南後恵理子教授(理化学研究所放射光科学研究センター チームリーダー)、大和田成起主幹研究員(高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 先端光源利用研究グループ 実験技術開発チーム)、久保 稔教授(兵庫県立大学大学院理学研究科)、岩田想教授(京都大学大学院医学研究科)およびカリフォルニア大学の共同研究グループは、近赤外線レーザーによって温度を急激に上昇させる方法を組み合わせた、新たな分子動画解析法を開発しました。これにより熱によって引き起こされる酵素内部の構造変化を捉えることに初めて成功しました。

本研究成果は、2023年9月18日公開(現地時間)のNature Chemistry誌に掲載されました。

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第6回 ヘルステック研究会 レポート

第6回のHTC研究会は、 東北大学大学院 医学系研究科 AIフロンティア新医療創生分野、東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム遺伝統計学分野、田宮 元教授による 『機械学習・人工知能を用いたゲノム健診の実現』です。今回は、日本橋での対面開催となりました。(以下講義より引用)

自己紹介ですが、もともとは遺伝学の出身です。1990年代に東北大学でゲノム解読やるということで、師匠から手伝ってきてといわれてから、今に至っています。東北大学ToMMoのスタートからはこちらでお世話になっておりますが、日本橋の理研AIPでも仕事しております。趣味は登山と極地探検で、今は水平の方に走っています。

今の仕事を簡単にいいますと、「遺伝統計学でゲノム医学を支える」ということになります。具体的には、東北大学ToMMoに代表されるような大規模ゲノムコホートのデータ分析の整理や、理研AIPセンターでのAI-basedの遺伝統計学による生命化学・医学ビッグデータの解析など、になります。仙台ではToMMo/医学系研究科と、東京ではAIPのあるコレド日本橋の二か所で仕事をしています。

また、10年くらい前に出した本「ゲノム医学のための遺伝統計学」という本があります。本講義の中心部分になるような理論が書かれています。ご興味があったら読んでみてください。

本日の内容ですが、現生人類の歴史を振り返ると、次世代シークエンサーの分析するべき突然変異がいかに重要か、すぐに理解できると思います。これまでの欧米者向けに作られてきたようなものを日本人のゲノム健診に応用していくのは、なかなかむずかしいということが分かってきております。

今後、大規模なゲノムシークエンスの時代が到来するだろうと、見込んでいます。その時に何が必要になるのか、本講義の最後に応用例などご紹介できればと思っています。

ヒトの人口学的歴史

この図は講義で必ず出す図のひとつです。国連人口基金のHPからとってきた図で、世界人口の推移を示しています。

人類が20万年くらい前にアフリカで生じて、長い間小集団で維持されてきました。1万年くらい前に氷期が終わって、この1万年くらいの間氷期で気温がだんだん上がってきて農業が可能になり、それまでは人類は絶滅危惧されるような状態でしたが、だんだん人口が増え始めました。

200-300年前に産業革命が起こり、医学の発展や工業製品が出てきました。乳幼児死亡率が極端に引き下げられて、人類は増加傾向に入ったというふうに考えられているわけです。

講義内容

  • ヒトの人口学的歴史と突然変異荷重
  • 次世代シークエンシング解析
  • 日本人基準ゲノムの構築と適用
  • 大規模ゲノムシークエンシング時代

(続きはヘルステックカレッジの参加でご覧いただけます)

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